2012年 05月 29日 ( 1 )

音楽評論家の吉田秀和さんがお亡くなりになりました。


吉田秀和全集 全24巻発刊に 天野祐吉がよせた文です。


いい言葉は遠くまで届く  天野祐吉

 いい言葉は遠くまで届く。当時、クラシック音楽には無縁だったぼくにも、吉田さんの言葉はちゃんと届いた。

 あれは、60年代のはじめだったと思う。ある晩、友人の家で、カザルスの弾くバッハのLPを聴いて、急にぼくもクラシック音楽を聴く気になった。で、そのとき、神田の書店で買った本が、吉田さんの『私の音楽室』(名曲三〇〇選)である。

 LPレコードは高いから、慎重に選ばなければならない。「名曲三〇〇選」はそのためのガイドブックとして買ったのだが、どっこい、中身はとてもそんなものではなかった。なにしろ、選び抜かれた300曲の第1曲目は、人類が生まれる前から虚空に鳴っていたと思われる「宇宙の音楽」である。で、「レコードなし」である。

 吉田さんのことを知らなかったぼくは、びっくりした。が、伊達や酔狂でそんなことをしているんじゃないことは、少し読み進むうちにわかってきた。著者がこの本で書こうとしているのは、名曲の紹介や解説ではない。名曲案内という形式を借りて、著者の考えている音楽の歴史を、さらには“音楽”という宇宙を書こうとしているのだ……。

 エピローグで、吉田さんは言う。
 「……私は、三〇〇曲の音楽をえらんだけれど、そのほかに、鳥の声や風や波の音は、絶対に欠けてはならないものだ。また、大都市の夜や明け方のさまざまのものの響きも、もしなくなってしまったら、私は、ひどくものたりなく思うだろう。音楽は、やはり、そうしたものの中に、つつまれながら、しかし、それ自体で完結した建物として、あるべきものだ」

あのとき、こういう言葉に出会っていて、ぼくはほんとうにしあわせだったと思う。この本だけではない。吉田さんの著作には、音楽という建物を突き抜けてぼくらに届いている言葉が、いつもぜいたくにあふれている。


先日の声楽家フィッシャー=ディースカウ氏につづいて吉田秀和氏の逝去 巨星墜つとはこのことでしょうか


お名前のように今は天の星となられているこの方も地区茶道会の星でした。

星志津子先生を偲ぶ会  5月27日 光 掬星庵にて

お薄席のお花は
オオヤマレンゲ
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by machiko11m | 2012-05-29 00:21 | モチーフは花 | Comments(2)