2012年 03月 18日
バラ色の私鉄の切符 |
先月末からとりかかっている断捨離で
居間のスチール本棚を解体して処分しました。
ただいま 本の整理中 古本屋さんへ持っていく本と 資源物回収へ出す本と 手元(自室の本棚)に残す本とにわけています。
そんな中で聞いた吉本隆明氏の逝去
この本ひさしぶりに手にとりました。
もうすっかり忘れてしまっているけれど、 山口の古本屋第三書房で購入したみたい。
難解で、硬くごつごつ感のある言葉の詩行 抒情とは対岸にあるような彼の詩ですが、
それゆえに20代の(あの時代の)
私に突き刺さるものがあったのでしょう。
「涙が涸れる」
けふから ぼくらは泣かない
きのふまでのように もう世界は
うつくしくもなくなつたから そうして
針のやうなことばをあつめて 悲惨な
出来ごとを生活のなかからみつけ
つき刺す
ぼくらの生活があるかぎり 一本の針を
引出しからつかみだすように 心の傷から
ひとつの倫理を つまり
役立ちうる武器をつかみだす
しめつぽい貧民街の朽ちかかつた軒端を
ひとりであるいは少女と
とほり過ぎるとき ぼくらは
残酷に ぼくらの武器を
かくしてゐる
胸のあひだからは 涙のかはりに
バラ色の私鉄の切符が
くちやくちやになつてあらわれ
ぼくらはぼくらに または少女に
それを視せて とほくまで
ゆくんだと告げるのである
とほくまでゆくんだ ぼくらの好きな人々よ
嫉みと嫉みとをからみ合はせても
窮迫したぼくらの生活からは 名高い
恋の物語はうまれない
ぼくらはきみによつて
きみはぼくらによつて ただ
屈辱を組織できるだけだ
それをしなければならぬ
居間のスチール本棚を解体して処分しました。
ただいま 本の整理中 古本屋さんへ持っていく本と 資源物回収へ出す本と 手元(自室の本棚)に残す本とにわけています。
そんな中で聞いた吉本隆明氏の逝去
この本ひさしぶりに手にとりました。
もうすっかり忘れてしまっているけれど、 山口の古本屋第三書房で購入したみたい。
難解で、硬くごつごつ感のある言葉の詩行 抒情とは対岸にあるような彼の詩ですが、
それゆえに20代の(あの時代の)
私に突き刺さるものがあったのでしょう。
「涙が涸れる」
けふから ぼくらは泣かない
きのふまでのように もう世界は
うつくしくもなくなつたから そうして
針のやうなことばをあつめて 悲惨な
出来ごとを生活のなかからみつけ
つき刺す
ぼくらの生活があるかぎり 一本の針を
引出しからつかみだすように 心の傷から
ひとつの倫理を つまり
役立ちうる武器をつかみだす
しめつぽい貧民街の朽ちかかつた軒端を
ひとりであるいは少女と
とほり過ぎるとき ぼくらは
残酷に ぼくらの武器を
かくしてゐる
胸のあひだからは 涙のかはりに
バラ色の私鉄の切符が
くちやくちやになつてあらわれ
ぼくらはぼくらに または少女に
それを視せて とほくまで
ゆくんだと告げるのである
とほくまでゆくんだ ぼくらの好きな人々よ
嫉みと嫉みとをからみ合はせても
窮迫したぼくらの生活からは 名高い
恋の物語はうまれない
ぼくらはきみによつて
きみはぼくらによつて ただ
屈辱を組織できるだけだ
それをしなければならぬ
by machiko11m
| 2012-03-18 00:41
| その他
|
Comments(2)
Commented
by
名無し
at 2012-03-18 22:15
x
わかったような分らんような詩ですね。遠い青春のことみたいです。でももう帰らない。
0
Commented
by
machiko11m at 2012-03-19 22:32
名無し様 帰らない 帰れない 名無し様にはこの詩を
ぼくはでてゆく
冬の圧力の真むこうへ
ひとりっきりで耐えられないから
たくさんの人と手をつなぐというのは嘘だから
ひとりっきりで抗争できないから
たくさんの人と手をつなぐというのは卑怯だから
ぼくはでてゆく
すべての時効がむこうがわに加担しても
ぼくたちがしはらったものを
ずっと以前のぶんまでとりかえすために
すでにいらなくなったものにそれを思いしらせるために
ちいさなやさしい群れよ
みんなは思い出のひとつひとつだ
ぼくはでてゆく
嫌悪のひとつひとつに出遇うために
ぼくはでてゆく
無数の敵のどまん中へ
ぼくは疲れている
がぼくの瞋りは無尽蔵だ
(吉本隆明 転位のための十篇:ちいさな群れへの挨拶より抜粋)
ぼくはでてゆく
冬の圧力の真むこうへ
ひとりっきりで耐えられないから
たくさんの人と手をつなぐというのは嘘だから
ひとりっきりで抗争できないから
たくさんの人と手をつなぐというのは卑怯だから
ぼくはでてゆく
すべての時効がむこうがわに加担しても
ぼくたちがしはらったものを
ずっと以前のぶんまでとりかえすために
すでにいらなくなったものにそれを思いしらせるために
ちいさなやさしい群れよ
みんなは思い出のひとつひとつだ
ぼくはでてゆく
嫌悪のひとつひとつに出遇うために
ぼくはでてゆく
無数の敵のどまん中へ
ぼくは疲れている
がぼくの瞋りは無尽蔵だ
(吉本隆明 転位のための十篇:ちいさな群れへの挨拶より抜粋)